エジプトドリフターズ(01/8/5)


       「俺今度捕まったら、志村ケンって名乗るわー」
と高らかに(?)宣言し、ピラミッド盗頂に失敗した翌日
僕はもう一度、盗頂チャレンジを宣言したのでした。

すると一緒に捕まり、今日も一緒にチャレンジする人は
「じゃあ俺は、いかりや長介って名乗るわ」
と言っていました。

捕まっても小額の賄賂を払えばすぐに帰してもらえるらしい
ので取り敢えずテッペンまで行きたい というのが僕らの考えでした。


そして本日も丑三つ時に出発。
今日も順調にタクシーを捕まえました。そして、運ちゃんに
「ギザのピラミッドまで10ポンドね」
と言ったのですが、なんだか理解していない風に
「OK」
と答えて出発しました。
タクシーは夜のカイロ市内を爆走します。

しかしギザ市内に入ったころから、タクシーの動向が怪しく
なってきました。どうやらここらで止まろうとしている
感じです。

この運ちゃんはギザ市内にある、ピラミッドホテルに行こう
としているのでしょうか?そのホテルからピラミッドまでは
結構な距離があるので、僕らは止まろうとしている運ちゃん
をせかしてタクシーをずっと進めました。

さてしばらく走って、本日のピラミッド盗頂裏ルート入り口
にまで来ました。そしてタクシーを降りてから運ちゃんに
10ポンドを渡すと

「なんじゃこら!?全然たんねーよ」

みたいにぶち切れてきました。
彼としては大分前のホテルまでの料金だと思っていたの
でしょう。しかし僕らも騙しているわけではないので
さっさと車の進行方向と逆方向に歩き出しました。

すると、運ちゃんは車を降りておっかけてきます!

大変しつこい運ちゃんで困ったので、僕らは中央分離帯を
渡り逆車線へ渡りさらに小道へと入って行きました。

さすがの運ちゃんも車をおいて逆車線まではいけない感じ
だったので、悔しそうにブオォンブオォンと吹かして
走り去っていきました。

これで一安心。僕らは小道の奥にある本日の裏ルートへと
歩を進めたのでした。そこを50mくらい進んだときに!

! ピッカーン!!と後方でライトが光りました!!
そしてそのライトが爆進してきます。そして僕らの横まで
くると急ブレーキで止まりました。

すると中からさっきの運ちゃんが飛び出してきました!

あぁなんてしつこいのでしょう。10ポンドは払ってるのに。

今回も僕達は車の進行方向と逆方向に逃げました。
しかし、同行した女性が一人捕まってしまったのです。

僕らはそれを見て助けにいったのですが、さすがイスラムの国。
女性に触ることは、タブーなので捕まえた運ちゃんもすぐに
彼女を離したのです。

こうして僕らはまた反対車線に渡り見事逃げられたのでした。
さすがにしつこい運ちゃんも、もう追ってきませんでした。

さてさて気を取り直して、いざピラミッドへ。
住宅街をぬけ、がけを登り、敷地内へ。
この崖を登っている途中に、崖の目の前の家のおっちゃんが
こっちをみていました。僕らは、必死に静まり返り、岩のフリ
をして止まってみましたが、明らかにバレバレでした。

さて崖を登り終えるとそこには暗闇に浮き上がるピラミッドが!

しかもクフ王のピラミッドの中腹に流れ落ちる流星が!!

あぁなんて感動的な風景なのでしょう。昨日は、ピラミッドの影
すら見えなかったのです。それが今日は流れ星まで・・・

さて、ピラミッドの周りには警備員が巡回しているので
見付からないように、ホフク前進をしたり、猛ダッシュしたり
して、登れるポイントまで回りこんでいきました。

この時の、ドキドキ感は、小さいときのかくれんぼのときの
ドキドキ感
そのもので、今思い出しても最高に楽しかったです。

さてさてなんとか警備員の目を掻い潜り、ピラミッドの目の前
まで来ました。ピラミッドの周辺にはさまざまな遺跡があり
そこに、身を潜めて、警備員がいなくなる隙をうかがうことにしました。

もう壁一枚向こうには警備員の気配が感じられます。
トランシーバーでなにやら通信しています。

僕らは笑いと緊張の息を押し殺してじーっと待ちました。
もう心臓バクバクです。

しばらく待つとピタッとトランシーバーの音が聞こえなくなり
ました。そして、ちょっと顔を出して辺りを覗うとさっきまで
いた警備員の姿が見えません。交代でどこかへ行ったのでしょうか?

僕らは「今しかない!」と判断し
一斉にピラミッドへ猛ダッシュしました。

そして、一段目に手をかけてジャンプした瞬間!!!

ピーッ!!

と笛が鳴り響き、物影に隠れていた警備員が10名くらい
飛び出てきたのです!!

これにはびっくりです。どうやら泳がされていたようです。
迫り来る警備員。僕は必死に登りました。

20mほどは僕の方が先に登り始めたので、このまま突っ走って
登れば、捕まるだろうがテッペンまで行ける!!

と思いました。そこで警備員の制止する声を振り切り
ひたすら登りました。

ピラミッドってイメージでは綺麗な段々になっていて登り易そう
ですが、実際は全く持ってばらばらで大変登り難いのでした。

ですから中々登れずに苦労しているところへ、もう毎日のように
僕らのような馬鹿な盗頂人を捕まえてきた警備員に追いつかれ
先を越されて、僕の目の前に立たれてしまいました。

すると彼は

「ストーップ!!」

と叫び、僕の眉間へ向けてカチャカチャっと音を立てて何かを
向けた
のでした。

僕はそのときに初めて、上を見上げました。するとそこには
警備員ではなく、遺跡警察官がいました。そしてカチャカチャっと
音を立てていたのは、拳銃でした!

これは、多分弾が入っていないとは言え、止まらざるを得ません。
僕は生まれてはじめて ホールドアップ しちゃいました。
そして銃口をむけられたまま、静かにピラミッドを降りたのでした。

すると、事前情報では捕まると、ピラミッド横の詰所みたいな
ところで軽く怒られて終わり
と聞いていたのですが
降りるとそこには、ピカピカとライトを光らせた護送車が・・・

こんなに早く護送車が来るってことは完全に泳がされていた
証拠です。っていうか
護送車でどこへ連れていかれるのでしょうか・・・

とりあえずオトナシク護送車に乗りました。
状況的には昨日よりやばそうです・・・

さてさて護送車は軽く、詰所をスルーしてピラミッドから
遠ざかっていきます・・・

しばらく走ると遺跡警察の本署みたいなところへ着きました。
そして僕らは車を降り、中のオフィスへ連れていかれました。

中では偉そうな人が僕らの尋問をはじめました。

彼曰く
「お前らが来ることは通報されてしっていた」
とのこと。これが本当だとすると、タクの運ちゃんか崖の親父
でしょう通報したのは。

さて、しばらく色々尋問されると、今度はオフィスの奥の
拘留所兼反省所みたいなところへ連れていかれ鉄扉を閉められて
しましました・・・

あぁ拘留です。交流ならよかったんですが拘留です・・・
僕らはしばらく反省所で反省というなの爆笑トークをしていました。

皆でタクシーから逃げたり、ホフク前進したり、物陰に隠れたり
とても童心に返り楽しいひとときでした。

ってそんな悠長な話をしている状況ではないんですが・・・

しばらーく拘留された後に、もう一度オフィスに戻されました。
そして、警察署長が、ノートを取り出し、

「お前らの名前とパスポート番号をかけ」

と言ってきました。
僕は、ここまで深刻な状況になると思っていなかったので
捕まったら志村ケンと名乗るわー
といっていたのですが、冗談が通じなさそうな雰囲気です。

そんな中でも、男としてここは志村ケンと名乗るかどうか
迷っていたのですが、横で女の子がちょっとおびえ気味だった
ので、

「どうする?本名名乗る?」

って聞いたら

「私は本名書くっ!」
って言うので、女性一人だけを生贄にはさせられないと思い
僕はトップバッターとして、ノートに本名嘘のパスポート
番号を書きこんだのでした。そして次はおびえていた女性の
番です。すると彼女は僕の見ている目の前で!!

いきなり偽名を書き出したのです!!
ほんの10秒前まで本名を書くといっていたのに
すると一人が偽名を書き始めたので残る4名も思い思いに
偽名を書きなぐりはじめました。

これでは僕が生贄です・・・

そして最後の男の子は、チャレンジ前の宣言どおり
所長のノートに、堂々と

IKARIYA TYOUSUKE

と書いたのです!!

そして所長は、全員分を書き終わると、そのノートを読み上げ
点呼を採り始めたのです。
すると僕や他の人の場合は、偽名ですが普通に呼ばれたのですが
いかりや長介の場合は、発音が難しいらしく

「チョスケ ヌカリハ!!」「チョウスク イカリハ!!」

などといっていました。
その度に彼が、

「ノー!ノー! チョウスケイカリヤ!!」 

と真顔で所長に教え込んでる様は
まさにドリフの爆笑コントそのものでした。


そんなこんなで無事釈放され、
皆で思いだし笑いをしながら陽気にホテル前まで戻ってきて、
ピラミッドに登れなかった代わりに

「組み体操ピラミッドを作って記念写真撮ろう!」

ということになりました。
そして、そこらでブラブラしていたエジプト人に

「写真とってー」

とお願いし、6名で3段ピラミッドを作りました。
男性3名が1段目に、2段目、3段目は女性陣という構成です。
そして皆満面の笑顔で

「ハイ!!チーズ!!」

そして帰国後出来あがった写真を見ると、そこには驚愕の事実が!!
それが↓これ!


なんと1段目の男性陣がすっぱり切れているのです!
故意なのか単に下手なのかわかりませんが、
あまりにも綺麗に存在が否定されています・・・
写真の上の方は、わけのわからない背景が映っています・・・
そんなこんなで最後の最後までダメダメな盗頂劇でした。


そんなこんなで二日間に渡り繰り広げられてきた、ピラミッド盗頂劇場。
2回とも失敗に終わってしまいましたが、なんなら失敗したことで
面白いことがいっぱい味わえました。皆さんには違法行為なので
お勧めはしませんが、一度チャレンジしてほしいよな気もします。



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