オシャレ番長の夜(06/7/11)


       はいこんにちはー
ワールドカップの熱狂に揉まれにドイツへ行って来ましたー。

超盛り上がってて国全体がアツかったです。
とある、一箇所を除いて・・・。
これはそのとある一箇所の話です。


ワールドカップ期間中のドイツではホテルの値段が急騰していて
オランダやベルギー、チェコなどの隣国に宿泊の拠点を置いて
そこからドイツまで試合を見に来ているサポーターも沢山いました。

調べて見ると、試合のある日の開催都市のホテルは
平常時の倍近くまたはそれ以上している感じです・・・。

さて、そんな物価高騰のドイツにも強い味方がいました。
それはファンキャンプと呼ばれるテント村です。
ドイツ国内に3箇所あるテント村があり、移動しながらどのテント村にでも泊まれて
テント+寝袋+マットが付いてて大会期間中何泊しても
約7万円
と超リーズナブルです。
30泊しても7万円なので1泊2300円くらいです。(10泊だと1泊7000円ですが・・・)

このファンキャンプの特徴は、
泊まりたい放題というだけではありません。

広いホールのようなところに大画面があって
皆でサッカー観戦(パブリックビューイング)ができたり、
いろんな屋台があったり、飲み屋があって夜はクラブみたいになったりします。
試合会場までもシャトルバスが運行したり、試合がないときには観光地への
日帰りツアーなども催行しちゃったりするようです。

他にもフリークライミングやゴーカートができたり
白砂を敷いてビーチみたいのを作ってあったりとエンターテイメント性ばっちりです。
温水シャワーもあるようだし、トイレも清潔で、セキュリティもばっちりのようです。


ただ、僕がいったドイツ南部のイルズホーフェンという街のテント村は
超ど田舎にありました。

最寄り駅には特急などは止まらず、鈍行のみがとまります。
駅を降りた瞬間から、ホームと野原が一体化しています。
駅のホームには「ファンキャンはこっち⇒」みたいな張り紙がしてあったので
それを辿っていくことにしました。しかしその歩みもものの1分で途絶えました。
ホームに降りて、駅前のロータリーまで出たところで・・・。

駅前にはタクシーもバスもなく、時が止まったような佇まいです。
事前の調べによると

“最寄り駅はEckartshausen駅となりますが、徒歩圏内ではございません。

なんてホームページに書いてあります・・・。

タクシーを利用してくださいなんて書いてあるので、
駅からタクシーに乗ろうとしたのですが、タクシーが一台もありません・・・。

日に数本(であろう)電車が着いたにも関わらず、タクシーはなし・・・。
時が止まっているこの駅周辺には、来る気配もありません。


んー・・・。どうしましょう。しばし途方にくれていたら
後方でぶーんという音がして、車が一台やってきた気配がしました!
「タクシーか!」
と思って振り向いたのですが、普通の車でした・・・。

がっくり・・・

してる場合ではありません。この車を逃したら次いつ車が来るかわかりません。
といったわけで、笑顔で手を振ってみました。
すると、この車がビターッと僕の傍らに横付けしてくれました。

そこで道を聞くふりしつつ
「えー、ファンキャンプ OK?」
と、いきなり乗せてもらう前提でお願いしました。すると

「OK!」

と運転手のおっちゃんは一発回答!いやー助かりました。

といったわけでドイツでの初ヒッチハイクです。
(過去に親と一緒にカンボジアでヒッチハイク
イランの砂漠で早朝からヒッチハイク経験アリ)

快くおっちゃんは乗せてくれて田舎道を爆走します。
周りは絵に描いたようなど田舎で、大学時代を過ごした北海道の風景のようです。
見渡す限りの牧草と丘陵です。風景に酔いしれながらも頭をかすめたのは

こんなところにあるテント村ってどんなところなんでしょう?

という疑問です。そんな疑問をよそに激走10分で目的のテント村へ着きました!

いやーすごいですねー
テント村の敷地は一面のグリーンベルト。つうか牧場です・・・。
その牧場にフェンスを作って囲いが出来ていて
その敷地内にテントが無数に貼ってあります。

通常あるキャンプ場ではなく、
今回用に牧場に手を加えて作られたキャンプ場のようです。
そんなことはさておき、さっそく入村の手続きをして、テントを確保し
荷物を置いてからテント設営地から道路を挟んで向かい側にある
パブリックビューイングができる施設にいってみました。

するとその建物は円形をしています。
どこかで見たことがある気がするこの建物は・・・。
どう見ても牛の競り場です・・・。

牧場に寝泊りして、牛の競り場で飯くったり、サッカー見たりと
牛気分を満喫できる施設それがファンキャンプです。

さてさて競り場で、夜11時までサッカーをみて、その後テントへ戻りました。
日本人も多くいて、とある人のテント前に集まり、夜空の下でしばし
飲みながらアツくサッカーの話などを語り合いました。
テント生活をしながらサッカーを見にドイツへ来るぐらいなので
みな相当なサッカーバカで、話も盛り上がります。

夜中の1時か2時を過ぎた頃に、みんなが寝るといってテントへ戻って
行った
ので自分もテントへ戻ることにしました。

テントに戻ってみて、超大事なことに気付きました。

「自分のマットと寝袋はどこ?

ということです。前日まではかなり暑かったのですが
この日は急に冷え込み、相当寒くなってきてます・・・。
そんな時に、テントがあるとは言え、マットもなければ寝袋もないとは・・・。
しかし、皆持ってたよなー と思いながら夜も遅く職員もいないので
どうすることもできず、
「まー持ってきたもん着ればなんとかなるだろ」ってことで
取り敢えず、諸々着込んで寝ることにしました。

上から、Tシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、トレーナー、パンツ、Gパン、短パン、靴下です。

これだけ着りゃ大丈夫だろ と思ったのですが、ここは地平線が見えそうなくらい
のどかな牧場の真っ只中です。昼夜の寒暖の差は、半端じゃありませんでした・・・。

テントは一応ファスナーで締まるものの、なぜか全部は締まらず
隙間から冷気がなだれ込んできます。

そして、大地が冷やされマットを敷いてないので
テントの底からグングン体温が奪われていきます・・・。
一人放射冷却状態です・・・。
寒すぎて全く寝れません・・・。

他に着るものはないかと思いかばんの中を探すと
パンツと靴下の予備がありました!そこで、どうせ誰にも見られてないので、
靴下を3枚重ね履きしつつ、
Gパンの上から短パンをはいて、その上からパンツ2枚をはくという
ピーコも絶賛するであろう人生初のオシャレに挑戦したのです!

これで少しはあったまるだろうと思って横になり、目をつむりました。

5分後。
寒すぎて寝れません・・・。

しかし僕は着れるもの全てを着てしまったので、
もうこれ以上身にまとうものはありません・・・。

それでも何かないかと必死でかばんの中を手探りしてみました・・・。
すると、日本から持って来た45リットルのゴミ袋が2枚でてきました。
これは雨とか降ったときに、バッグとかを入れる用として持ってきました。
もしもの時に重宝しそうな大事なグッズです。
とは言え2枚あるので、1枚は使っても大丈夫そうです。
しかも、もうこれしか手段がありません。

ただし、頭からゴミ袋を被って寝たら、そのまま窒息死しかねません。
発見されたときに、テントの中でゴミ袋を頭から被って、下半身はGパンの上に短パンをはいて
さらにその上にパンツを2枚はいてる姿が発見されたら、相当なレベルの謎の死です。
ドイツのタブロイド紙とかに 
“日本人、牧場で謎の死 頭にはゴミ袋 下半身はパンツ重ねばき!”
とか書かれてしまいそうです。宮部みゆきも驚愕のミステリーの題材になってしまいます・・・。

といったわけで、窒息死しないようにゴミ袋に頭が通るくらいの穴を開けて
そこからすっぽりかぶるような感じにしてみました。(ポンチョみたいなイメージでしょうか)

これで幾らか寒さは凌げそうです。
ということで横になり、目をつむりました。

5分後
これでも寒すぎて寝れません・・・。
どうしましょう・・・。

しかし迷っていても仕方ありません。先ほど1枚は残しましたが
もう最後の切り札を使うしかありません。ゴミ袋をもう一枚着ることにしました。
心境的にはマッチ売りの少女な気分です。最後の一本・・・みたいな。

上に着るよりも腰のあたりの冷えをおさえようと思ったので
今度はゴミ袋に足が出せるように、穴を2つ開け、おむつのような感じではきました。

この姿相当、変態です・・・。
上半身と下半身にゴミ袋を着用してます。
こんなオシャレな格好で、発見されたらまじで洒落になりません。

週刊ポストとかに 
“三十路男が独国で恥をさらし。ゴミ袋をおむつにした状態で発見!”

とか書かれてしまいそうです・・・。

しかし、こんな状況下では
上下ゴミ袋着用法案に反対している余裕はありません。
一人だけど満場一致で可決です。
こうして、これまた人生初のゴミ袋を上下完全装着を実行しました。

しかしこんなパリコレもびっくりの超オシャレな格好までしてるのに
全く寝れません・・・。
濡れてに泡、馬の耳にも念仏、暖簾に腕押し・・・。
幾ら言葉も並べても、この無力感から逃れられません。

すきま風もきついのですが、一番きついのは
底から体温が奪われることです。
といったわけで、寝ることは諦めました
寒さ対策として、体育座りに路線変更をしました。

真っ暗な中着膨れして上からパンツ重ねばきして、
さらにゴミ袋を上下着用して、ブルブル振るえながら体育座り・・・。
この姿をもし誰かが目撃したら、そこらのホラー映画なんかよりも
よっぽど恐怖に慄き、腰を抜かしたことでしょう。

ちなみに後で判明したのですが、
7万円コースだと、テント+寝袋+マット+30泊泊まり放題なのですが
僕はこのコースは申し込んでおらず、
僕の頼んだ1泊(26ユーロ)ずつコースだと
テントは付くのですが寝袋とマットは付かなかったのでした・・・。

こうしてワールドカップの熱狂の中、
パリコレもハリウッドも驚愕のオシャレ&ホラーな世界をプロデュースし
オシャレ番長のいろんな意味で寒すぎるテント村の夜が過ぎていったのでした。