早朝に笑顔で・・・ (01/6/23)


       僕はイランでどうしても行きたい所がありました。
そこへ行くためにイランへ行くことにしたくらい行きたいところでした。
その町の名はバム

首都テヘランからは軽く1000km以上離れており、バスで18時間
という、イラン南東部、パキスタンとの国境に近い町でした。
さてテヘランでバム行きの夜行バスのチケットを手に入れて、バスに乗りました。
ボルボ製のなかなか立派なバスで乗り心地はかなり快適でした。
18時間乗っても400円くらいと
ジャパネットタカダも驚きのお安い価格設定です。
> ゲストの志垣太郎は、

「これなら20回でも乗っちゃうな」

くらいのいつもどおりのオーバーなリアクションをしてくれるでしょう。

聞いた話だとガソリンは1リットル2円くらいと
テレコンワールドもサプライズなプライスです。

0Gフィットネスストライダーを売っている謎の日系人キミコ・タナカ
「ワァーオ!これならいつでも満タンね」と怖い作り笑顔で言うことでしょう。

さてイランの道路は予想以上に舗装が綺麗で爆睡にはもってこいでした。
前日、テヘラン空港の硬いベンチ夜を明かした僕たちは、猛爆睡でした。

そして気が付くと朝になっていました。
時計を見ると、朝6時半です。昨日、バス会社の職員から聞いた話では

「朝5時半にバムに着く」

といっていたなーと思いながらも、
いつも通り遅れてるんだろうとしか思っていませんでした。

窓の外は一面の砂漠地帯
乾いた大地がどこまでも続く荒涼とした大地・・・
窓の外を眺め、独り酔いしれていると看板(標識)が見えました。
バムとペルシャ文字とアルファベットで併記されていました。
もうすぐかー
と思ったのですが、ひとつとてもとても気になることを発見してしまったのです。

      


バムと書いてある町への矢印が、僕らの進行方向と逆方向なのです・・・
これはどういうことでしょう。
寝起きなので思考能力0に近く、頭の中も真っ白で理解できていません。
取り敢えず
運ちゃんに「バムに行きたいんだけど」
と言うと、

運ちゃんは

「分かった。分かった。任せとけ」
見たいな感じで答えるので、
なんだまだバムまで来てないんだ
  と思いました。

そしてしばらくして、バスは砂漠のど真中
一軒のさびれた小さな小さなチャイハネ(喫茶店)の前で止まりました。

そして運ちゃんは

バムに行くならここで降りろ

というのです。

砂漠のど真ん中で、オアシスの町 

とは聞いていましたがここで降りれば

砂漠のど真ん中で、おら死ぬの待つ 

と言いたくなるような光景です。

運ちゃんにバム?と確かめると
さぁさぁと言う感じで促され、車外へ。
寝ぼけている頭でもさすがにおかしいことだけわかるので
上手く伝わってないなーと思い、バスのチケットを見せました。
すると運ちゃんは、なんと

そのチケットを軽く破り捨てたのです・・・

あー彼は一体なんてことをしてくれるんでしょうか!?
プロレスラーがもらった花束で相手を殴りつけたようなもんです。
そして彼は

「バムはとおの昔に走りすぎた。
いきたいならここで降りてなんとかしろ。」

と言い去り、行ってしまったのです。
荒野に呆然と立たされる二人・・・

何かの気配を感じて振り向くと、ロバの親子にのった人間の親子
どこから現れどこへいくのかわからないまま
砂漠の向うへと消えていったのです・・・

なんだかスターウォーズで見たことあるような世界が広がっています。
ロバの親子って・・・それにまたがってるって・・・タイムスリップしたようです。
頭がパニックな僕たちは、取り敢えず、チャイハネに入ってみました。
眠そうな店員に地名を聞くと

FARAJI

と答えました。
歩き方を広げてみると当然載ってません。
地図をみるとかろうじて載っていました。
バムから70kmは過ぎ去っています。
しかもここは、街の端も端。郊外中の郊外って感じで
なにもありません。

仕方がないので、バム方面へ行くバスを待つことにしたのですが
そんな早朝に、バムへ行くバスは全くくる気配はございません。

トイレをしにチャイハネの裏へいくと、向こうにコヨーテのような動物を発見・・・
なんだか、動物奇想天外で見たような光景です。
加藤晴彦は感動の涙をこぼすでしょうが、
この状況下で生で見ちゃうと、絶望の涙がこぼれます。

しかし凹んでいても仕方ありません。
しかも今回は連れのアフロマンがいるので、やや心強いです。
アフロマンは少林寺拳法部元主将で国際大会出場の経験がありました。
とりあえずチャイハネでチャイを飲んで作戦を練ることに。

っていうか、残された道はただひとつ。
そうヒッチハイクです。

取り敢えず道に出て、親指を立ててみました
まず一台目が荒野の向こうからやってきました。
ブーン・・・
軽く通り過ぎていきました。
ちょいと顔がしかめっ面です。
もともと髭もじゃで強面のイラン人男性ですが
それとは別次元のしかめっ面な気がします

まぁしょうがないですね。
僕らも日本の田舎の町で朝6時半にイラン人がヒッチハイクしてたら
しかめっ面して通り過ぎてしまうかもしれませんから。

めげずに2台目を狙いますが、やはり通り過ぎていってしまいます。

とてつもない田舎なのであまり交通量もないので
一台一台大切にしたいところですが
どうも今日は親指の調子が悪いらしく止まってくれません。

仕方がないので踊ってみることにしました。
運ちゃんにこいつは馬鹿で安全なやつだと思わせる作戦です。

と思っていると荒野の向こうからファルコン号並にボロイトラックがやってきました。

早速ダンス開始。
手を振り腰をふり足をあげ、意味もなく変なおじさんダンスをしてみたり
全身で自分の馬鹿さをアピールしました。

するとどうでしょう。さっきまでのスルーが嘘のように
一発で止まってくれました。

まったく英語の通じない運ちゃんで、
キャプテンソロ
というよりはチューバッカ

って感じのおっちゃんでしたが
バムって町の名前を告げると快く乗せてくれました。

運転席の横に乗ろうとすると、運転席のすぐ横にはナイフが・・・
連れの卑怯者アフロマンは、それを見るなり僕を運ちゃんの
横に座らせて
自分は逃げれるように窓側に座りました。
本来なら少林寺3段の彼が運ちゃんの隣に・・・
もしここが日本だったら僕はオー人事へ間違いなく電話していたでしょう。
しかし、その不安はまったくの杞憂でチューバッカは
優しく僕らをバムの町の入り口まで送ってくれたのでした。

と言うわけで、トルコでの嫌な予感がいきなり的中して
砂漠にほうり出されたのですが、ヒッチハイクも経験できてめでたしめでたしでした。

そして僕がバムで見たかった 謎の大遺跡 アルゲバムはこんな感じです。


この遺跡は200年ほどまえに忽然と人が消えてしまった遺跡で
かなり規模も大きく無理して来て良かった。と思わせるものでした。

しかしこの話にはまだ続きが・・・
これは後に、イスファハーンって町で会ったイラン人に教えてもらった
話なのですが、イランでは

西洋のジェスチャーは、イランではこうする


らしいのです。

ということから話をまとめると、
イランの砂漠地帯、スターウォーズの世界で
早朝から馬鹿な日本人が半泣き必死の表情で尚且つ無理やり作った満面の笑顔
で、道行くイラン人の車に喧嘩を売り飛ばしていたのです。

中東でヒッチハイクをするときは、人差し指で足元を指すらしいのです。

砂漠地帯で早朝に笑顔で喧嘩を売り飛ばす・・・
ダースベイダーも理解不能の素でした。

朝っぱらからこんなとこで何をこいつらはやっているんだ?

と思うのは至極必至のことであったのでした。
これで、何故みなしかめっ面して僕らの前を通り過ぎていったのかが
わかりました。

というわけで、中東でヒッチハイクをしようとお考えの皆さん
(ってあまりいないと思いますが)その際は、親指立てずに
人差し指下ろしましょう。